電力システムの仕組み

【電力系統の構成】

大規模の発電所で生まれた電力は、送電線や変圧器などのいくつかの送配電設備を介して需要家まで届けられます。

電力は電圧Vと電流Iの積VIで定まります。

一方、送電線には抵抗分Rが含まれるので、電流が流れることで送電ロスと呼ばれる電力PLが消費され、P L=RI2で計算されます。

Iを小さくすればPLを小さくできるので、需要地近くまではVを大きくして送電し、需要地近くで電圧を小さくして配電する仕組みになっています。

電圧の変換はいくつかの電圧階級で行われ、電圧階級により次のように複数の変電所を経由して需要家まで届けられます。

超高圧変電所→一次変電所→中間変電所→配電変電所→柱上変圧器→需要家  

(図1 参照)

電力多消費の工場や鉄道には比較的大きな電圧で供給されます。

一方、配電変電所からはビル、小工場、住宅に電力供給され、需要家までは配電線で結ばれています。

送電線・配電線・変電所を総称して送電ネットワークと呼ばれ、また、発電所・送電ネットットワーク・需要家を総じて電力系統と呼ばれます。

【図1】 5ebffd529f5c18437bceb8306dac76ac.JPG

【発電する電気と負荷の関係・周波数と回転数の関係】

電力系統では、多数の発電機が送電ネットワークに接続されています。

各発電機は同期発電機と呼ばれ、互いに同期して回転しています。

発電機の回転数と発生電力の周波数は比例関係にあり、発電機の回転力(運動エネルギー)はほぼ同量のエネルギーの電力に形を変えます。

図2は、重たい荷物を積載したリヤカー(負荷)が(送電ネットワークで)接続されたタンデム自転車を、5人(発電機5機)が同じ回転を維持して漕いで進んでいる図で、模式的に発電する電気と負荷の関係を表しています。

【図2】図2

電力系統では、送電ネットワークに接続されている負荷(仕事)の需要量の総和と各発電機の発生電力による供給量総和が常に等しくなるように、各発電機が互いに同期して一定の回転数を保つことで、電気の周波数(東地区50Hz、西地区60Hz)が維持されており、これを基本周波数といいます。

図3は蒸気でタービンを回転させ、その力で発電機を回転させ発電している様子を示しています。負荷側が発電力より大きければ、回転数は下るため、回転数維持のためにタービンにあてる蒸気圧力を増やすことが必要になります。反対に需要量が減ると回転数が上がるため、蒸気圧力を減らす必要があります。

【図3】図3

「供給>需要のとき回転数が上がり電気の周波数が上がる」 

「供給<需要のとき回転数が下がり電気の周波数が下がる」

図4のように、基本周波数を維持するために、『需要=供給』となるよう発電側(供給側)で制御しているのです。

【図4】図4

【発電機の保護と大規模停電の発生】 ~周波数変動が引き起こす問題とタービン回転数の制限~

発電機を高速回転させているタービンの翼は動作する回転数に制約範囲があり、これを逸脱すると、タービン翼共振や発電機軸ねじれが発生し翼は破壊に至るため、周波数を検出して異常値になる場合保護機能が働きます。

例えば大規模地震で「多くの発電機が同時被災して停止した場合」、電力系統全体で発電=負荷の関係が崩れ、周波数が大きく変動していきます。この結果、被災していない発電所では、周波数異常を検出して発電機と送電ネットワークを接続している遮断器を開きます。これにより、電気の供給が急激に減少し、供給=需要が維持できなくなるため、負荷を切り離す目的で送電ネットワーク内の各開閉器(遮断器)が開かれて結果的に需要家への給電を中断していき、大規模停電に至ることになります。

【配電網の仕組みと需要家への通電】

住宅とか学校など身近にある施設は高圧・低圧で給電されていますが、その役割を果たしているのが配電変電所です。配電設備の一般的な構成は図5のようになっています。

  1. 配電用変圧器から複数本の 6KV 幹線(配電線)がフィーダー遮断器を経由して出ている。
  2. 幹線の途中に複数の幹線開閉器が設置されている。
  3. 各幹線に電柱設置の柱上変圧器が接続され、その2次側から低圧配電線が出され、電力メーターを介して需要家の屋内に給電される。
  4. 工場や規模が大きい学校など高圧受電の需要家は柱上変圧器を介さず、幹線から6KV が引き込まれる。

以上のように、電力系統は需要と供給が一致するよう各階層で緻密に制御されており、その結果、高い電力品質が維持されています。

【図5】