電力システム改革のもたらすもの

移動のしやすさという点で、電力はもっとも優れたエネルギーとして日本の経済発展を支えてきました。大規模な電源を開発し、電力系統技術で高い信頼性を持った送電・配電システムを作り上げてきました。しかし、東日本大震災と原発事故により、それまでの電力システムの考え方、「需要の増加に応じた電源の開発」「大規模集電源への過度な依存」「再生可能エネルギーの導入」などの再考が必要になりました。

長い期間かけて作り上げてきた現在の電力システムを新たな形に変えて行くには様々な課題を克服する必要があります。前記の例に対比させると「需要側も発電や節電に参画できること」「地域の小規模分散電源が従来の大規模電源と協調できること」「再生可能エネルギーの実質的最適な、最大限の利活用をはかること」といったことになります。電力システム改革の具体検討として、エネ庁主導の制度設計WGにより制度面の整備が進められています。同時に、現在ある電力取引所における市場を活性化したり取引市場の厚みを増すための供給力確保のための施策が検討されつつあります。その工程は以下のようになっています。

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第一段階:広域系統運用の拡大

電力広域的運用推進機関(広域機関)が創立され、2015年4月から業務開始。全国大で電力の一定量の融通を可能にします。送電インフラ整備を伴うため時間を要しますが地域間での平常時や緊急時の電力需給のアンバランスが解消されていくことになるでしょう。

二段階:電気の小売の全面自由化

一般家庭における(低圧の)電気購入の選択肢が増えることになります。低圧の自由化により、電気販売で様々なメニューが提案されてくると想定されます。その影響が、スーパーや工場など既に自由化されている高圧以上の領域にも生じてくると考えられます。

そして、同時に発電の自由化も進行しており、これまで一般電気事業者(いわゆる電力会社)にもっぱら供給されてきた電源に関係する規制(卸規制)が撤廃されます。これにより、かかる電源が卸電力取引所における取引対象となりやすくなることで電力小売り業者の供給力になっていくことが期待されます。

第三段階:送配電部門の法的分離

送配電網を誰もが公平に利用できるようにするため、電力会社の送配電部門を別会社化して、中立性・独立性を高めようとするものです。全ての需要家、地域コミュニティ、企業が自由に電力を創造する、自由に電力を流せるといった市場を実現していくことが目指す方向であり、そのための重要な策であるといえます。送配電網はいわば誰もが公平に走ることが出来る有料道路のようなものです。電力の流れの渋滞が発生せずに、誰もが適正な利用料金(託送料金)を払えば公平に使えるようになることが理想と言えます。

このように、電力システム改革により、長らく地域独占を前提としてきた日本の電力市場がおおよそ60年ぶりに転機を迎えます。

そしてこれに伴う様々な事業形態が生まれてくるのです。